Seeink

Menu

株式会社明電舎 | 専門性の高い領域の事業性評価を支援

seeink株式会社 > 株式会社明電舎 | 専門性の高い領域の事業性評価を支援

創業は1897年、日本で初めて国産電動機(モータ)を製造した企業として知られる株式会社明電舎。信頼性の高い技術力を強みとしたインフラ事業を中心に展開してきた同社では、技術革新やスタートアップの台頭、電力自由化といった環境変化に直面し、全社を挙げての新規事業プロジェクトに取り組んでいます。seeinkとの取り組みとして、新規事業アイデアの事業性評価や仕組み化の支援、そしてマーケットインの視点からの事業創出を支援させていただきました。

今回は、同取り組みを推進した明電舎の坂野 仁美様と、本プロジェクトを主導したseeink取締役CTOの澤口による対談を通じ、取り組みの背景や成果、今後のスケール化への展望について伺いました。

目的
  1. 新規事業のアイデア創出から評価・育成・事業化までの流れを体系化する
  2. 市場環境や顧客ニーズに照らした事業性評価を行い、競争力ある新規事業を創出する
  3. 外部パートナーの専門性を取り入れ、社内に不足する事業化ノウハウや客観性を補完する
課題
  1. 難易度の高い事業領域で、市場環境や競合状況の解像度を上げる調査に労力がかかる
  2. プロダクトアウトの新規事業が中心で、市場起点の発想が不足していた
  3. 収益性やキャッシュフローを見極める事業性評価が難しく、事業開発が停滞していた
効果
  1. 技術先行ではなく、まず事業性や市場などを分析するアプローチが浸透した
  2. 半導体やオゾン水など、情報が得にくい領域でも調査でき、解像度を高められた
  3. 複数のビジネスモデル案をシミュレーションできるキャッシュフローシートを作成した
  4. 事業性評価の仕組みが社内に定着し、今後のスケール化や事業部への承継を見据えた基盤が整った

プロダクトアウトからマーケットインへの転換が求められた、新規事業創出プロジェクト

株式会社明電舎 経営企画本部 事業開発部長 兼 サステナビリティ推進部
地域エネルギーソリューションプロジェクト員
坂野 仁美様

澤口:御社の新規事業開発の背景についてお聞かせください。

坂野:弊社の主な事業ドメインである電力業界では、電気設備や産業用モータなど社会インフラとしての性格を持つ、信頼性の高い技術が求められます。そのため、これまでは新規プレイヤーは少なく、大きな変化が生まれにくい業界でした。
しかし近年では、技術革新の加速やスタートアップ企業の台頭、電力業界自由化といった環境の変化を受け、自前の技術力だけでは長期的な競争力を維持するのは難しくなっています。そこで技術力や開発力を出発点とするプロダクトアウトのサービス展開だけではなく、マーケットインの視点を取り入れて新規事業を立ち上げる必要があると強く意識されるようになったのです。

澤口:御社の新規事業開発の取り組みである、「MASTプロジェクト」が生まれた背景についてお聞かせください。

坂野:弊社ではこれまでも各事業部の単位でイノベーションや新規事業開発に取り組んできたのですが、予算や技術者の正しいリソース配分が難しいという課題を抱えていました。こうした状況を打開するため、横断的に全体像を把握できる仕組みを作ろうと役員の間で議論され、2年近く検討を経て2022年に立ち上がったのが「MASTプロジェクト」です。名称の「MAST」は「明電舎の明日を創造する・Thinkする」を組み合わせ、さらに荒波を乗り越える帆柱を意味する「mast」もかけたもので、当社の未来志向と挑戦姿勢を象徴しています。
プロジェクトの発足当初は、部門長を中心に議論を重ね、試行錯誤しながら運営していましたが、2024年からは仕組みが定着してきたため「イニシアチブ形態」と呼ばれる体制を採用し、各テーマ別に担当者をアサインして進行しています。現在は約20件のテーマが進行中で、1テーマを1人で担う場合もあれば、4〜5名のチームで推進する場合もあります。直接的な参加メンバーだけでなく、サポートや伴走を担う社員まで含めると、参画者は全体で80名にも上ります。

澤口:全社横断型のプロジェクトとしたことで、どのようなメリットがありましたか?

坂野:ひとつは研究開発費を全社負担として活用できる点です。事業部だけで予算を確保するのではなく、全社的な投資として活用できるようになったことで、新しい挑戦を検討する際には「まず『MASTプロジェクト』に相談しよう」という流れを作れました。相談窓口が明確になったことで、これまで埋もれていたアイデアや構想が集まりやすくなり、結果的に多様なテーマを検討できるようになっています。
さらに横断的な枠組みによって、異なる事業部の知見や顧客接点を組み合わせることが可能となり、従来は想定しにくかった協業やクロスセルの機会が見えやすくなったことも大きな変化です。

大企業特有のイノベーションのジレンマ。新規事業の自前主義と仕組み化に課題を感じていた

澤口:新規事業を立ち上げる仕組みにおいて、どのような要素が重要になるとお考えでしょうか?

坂野:弊社の新規事業開発では、「フェーズゲート評価」という仕組みを導入しています。もしゲート管理をしっかりしないままに新規事業の開発を進めると、思い付きや熱量の低い案までが通ってしまい、結果としてリソースが分散してしまいます。
そこで弊社のフェーズゲート評価では、魅力度と進捗度を大きなポイントとし、特に初期段階では「私たちの新規事業にふさわしいのか」を点数化し、一定基準を満たしたものだけを採用するようにしています。アイデア段階では思い付きの案も多く混在しますが、このゲートを通すことで「本気でやりたいもの」だけが残り、リソースを集中させられる仕組みとなっていることが特徴です。

澤口:新規事業開発の取り組みでは、どのような課題を抱えていたのでしょうか?

坂野:大きく3点あります。1つ目は、現場で生まれた事業の種が社内に埋もれがちだったことです。これをきちんと拾い上げて育成する仕組みが必要でした。
2つ目は、どうしても自前主義に偏る傾向があった点です。弊社は研究開発を重視する文化であり、技術シーズから発想するプロダクトアウトな進め方は得意なのですが、社会課題から逆算して解決策を探るマーケットインの発想を持ち込むことが課題でした。
そして3つ目は、大企業特有の組織の細分化による課題です。組織ごとの役割分担が徹底されるあまり「それは私たちの領域ではない」と新規事業に関わる余地が失わがちでした。

澤口:おっしゃった課題は御社特有のものではなく、他の日本企業やアメリカの大企業でも見られます。いかにして既存事業と新規事業の役割を切り分け、組織として両立させるかが、新規事業を成功させる鍵であると思います。

求めていたのは客観的な事業性評価。外部伴走者からの助言を活用し、停滞を打破したい

澤口:新規事業開発における弊社との取り組みについての経緯をお聞かせいただけますか?

坂野:「MASTプロジェクト」で進めているテーマのひとつで大手企業さんとご一緒していた際に、seeink社をご紹介いただいたのがきっかけでした。ちょうどとある新規事業のテーマが事業性評価の部分で停滞していたのですが、社内の仕組みとノウハウだけでは解決できないと判断し、外部の伴走者に専門的な助言をもらえればと考えたのです。
そこで最初の依頼は4、5件のテーマに対して市場環境や外部環境を評価していただくもので、まずは予算の範囲内で、どこまで検証いただけるのかをお願いしました。

澤口:どのような要素を検証し、どのように評価いただいたのでしょうか?

坂野:評価のポイントは「事業性を正しく見極められるか」でした。研究開発は社内で進めていましたので、技術的にやれるかどうかは問題ではなく、seeink社に市場性がないと判断されれば事業を止める覚悟でご依頼しています。結果として、すべてのテーマで一定の可能性があると評価をいただき、取り下げた事業はありませんでした。

坂野:seeink社に対する評価を一言で言えば「粘り強さ」です。市場調査や事業性評価は、単に知見を提供するだけでなく、まだテーマが固まっておらず、先の見通しも曖昧な状況でも並走していただく必要があります。弊社としても、外部パートナーに新規事業開発を丸投げするのではなく、自分たちのリソース配分しながら、一緒にテーマを深めてもらう存在を強く求めていたのです。

澤口:他社サービスとの比較検討は行われましたか?

坂野:大手コンサルティングファームによる支援サービスと比較しています。
比較して感じたのは、ゼロイチ段階の新規事業は要件定義が曖昧であり、大手のご支援では依頼すればするほど、コストが膨らんでしまうというデメリットがあります。かといって、自分たちで外部インタビューや調査サイトを活用しても第三者性が弱く、正しく事業性を評価したとは言えません。そうした中で、専門性を持ちながらコストを抑えられるパートナーとして、seeink社が最適でした。

澤口:社内の予算確保はどのように進められましたか?

坂野:外部への調査依頼は経費計上となり、稟議を通すハードルは高いのが実情です。新規事業の伴走には、事業開発部が担当しているのですが、常時20件のテーマを分担して進める状況では、個々の負荷がとても大きくなります。
そこで社内に対しては「自分たちで同じ作業を行えば人日換算でこれだけかかる。しかし外部パートナーに依頼をすれば客観性を担保できつつ、社内の負荷を大きく軽減できる」といったロジックで予算申請を行うよう工夫しています。

専門性の高い半導体領域や、VR研修の事業性評価。仕組み化や見込み顧客への提案まで実施

澤口:事業性評価の取り組みを検証、評価いただき、正式に新規事業支援をご依頼いただきました。現在、大きく2つの案件でお取り組みさせていただきましたが、それぞれの案件における取り組みの狙いや評価についてお聞かせください。

坂野:ひとつ目の取り組みとして、オゾン水生成装置の事業性評価をご相談しました。半導体の製造工程では、徹底した洗浄が必要であり、そこに使用されるのがオゾン水です。
実際のご依頼では、半導体市場における需要や課題、競合状況を徹底的に分析いただき、自社技術の優位性と掛け合わせて事業化の可能性を評価いただいています。最終的には複数のビジネスモデル案とキャッシュフローシートを作成していただき、変数を入れ替えればすぐにシミュレーションできるツールまで用意していただけました。

澤口:半導体市場は特にクローズドな印象があり、最新の情報はなかなか出てきません。「半導体」と一言で言ってもさまざまな種類があり、発信者の立場によっても情報は変わってきます。そうした前提をよく頭に入れた上で、地道ではありますが情報を一つひとつ整理していくことから始めました。

坂野:オゾン水生成装置の事業性評価は、半導体領域への深い理解が必要です。澤口さんやseeink社の代表の方は過去に近しい領域でのご経験があり、その点の心配は不要でした。社内の技術者や営業担当から「これほど分かりやすく整理できた人はいない」と高く評価されたほどで、解像度の高さに驚きましたね。
その次の取り組みでは、VR研修の事業化を支援いただきました。もともとは社内向けに活用していたVRの教育コンテンツを外販できないか、という発想から始まった新規事業です。オゾン水のケースが「市場性を見極める」段階だったのに対し、VRはすでに仕組みやコンテンツが整っていたため、むしろ「市場に受け入れられるのか」を直接検証する段階にありました。
seeink社には、実際に見込み顧客に訪問いただき、「この金額、この使い方で本当に必要ですか」と対話しながら事業性を検証するという、営業活動に近いフェーズに踏み込んでいただきました。大阪の中小企業まで一緒に足を運んで確認したこともあり、単なる調査にとどまらず、販売に近い動きを取り入れて市場検証を進められた点が特徴的だったと思います。

技術起点の新規事業から脱却。客観的な評価と、新規事業への熱量の両立が重要だと気づいた

澤口:これまで多岐にわたるテーマ、ミッションに取り組ませていただきました。弊社との一連のお取り組みを通じて、どのような成果が得られましたか?

坂野:「MASTプロジェクト」で事業化に至ったテーマはまだまだ限定的ですが、社内の意識は大きく変わりました。従来は技術を開発してから事業モデルを検討する流れが主流でしたが、今ではまず事業モデルを描き、その上で必要な技術を定めるというアプローチが浸透し始めています。
また、アイデアコンテストを通じて社員の挑戦を促す文化も育まれ、経営層からも「チャレンジを後押しする良い取り組みだ」と高く評価されています。事業性評価を通じて得られた知見が社内に仕組みとして定着しつつあることが、最大の成果だと考えています。

澤口:実際に新規事業に取り組まれている方からは、どのような変化を感じていますか?

坂野:これまでも事業性評価の重要性を頭では理解していましたが、実際にどう進めるべきか分かっておらず、市場規模や今後の成長といった数字の収集と分析に終始していましたが、seeink社の知見を得たことで「市場環境に照らして自分たちの立ち位置を相対化する」という発想から事業性を評価できるようになっています。必ずしも製品を作らなくても、比較や検証によって方向性を見極められるという点は、技術開発主導だった弊社にとって学びであり、大きな変化です。

澤口:弊社との取組みの中で、最も強く印象に残っているエピソードをお聞かせください。

坂野:VR研修の外販を検討していた際に、「ぜひ私たちも体験したい」とのことで澤口さんとseeink社の代表の方に来社いただいたことが記憶に残っています。弊社の教育コンテンツをVR化し、遠隔でも技術教育できるというサービスだったのですが、正直なところ、事業化の可能性には半信半疑だったのです。
しかし実際にVR研修を体験した直後、seeink社のお二人から「これはいけるかもしれません!」との嬉しい声があったことで「本当に事業化できるかもしれない」と担当者を含めて全員が自信を持てるきっかけになりました。それが大きな転機となり、外部の客観的な評価だけでなく、社内の高い熱量が新規事業には大事なのだと、気づかされました。

ゼロイチからスケール化へ。専門家の助力を得て、事業化プロセスを加速していきたい

澤口:これまでの取り組みを踏まえて、今後の展望についてお聞かせください。

坂野:これまではアイデアレベルから新規事業候補を見つける、いわゆるゼロイチの段階に注力してきましたが、現在の課題はスケール化にあります。すでに事業化候補のテーマはいくつか生まれており、それらを1件でも多く事業化できる仕組みを整えたいと考えています。
新規事業のテーマによって、売上規模を狙うもの、利益率を重視するもの、あるいは社内展開に活用するものなどさまざまですので、それぞれのケースで成功への道筋を整理し、より再現性のある仕組みを実現していきたいですね。例えるなら、新規事業の卵をふ化させ、ヒヨコくらいまで育てるフェーズまでは私たち事業開発部が責任を持ち、ある程度実績をつけてから事業部に引き継ぐ体制が必要だと考えています。その基準を、どのように設計していくかが今後の課題であり、引き続き外部の専門家の力もお借りしながら進めていきたいと思います。

澤口:seeinkの支援は、どのような企業にお勧めできるでしょうか?

坂野:幅広い分野で取り組んでいただけるので、どの業界であっても対応できると感じています。半導体のように難易度の高い業界に挑む新規事業においても、まずは丁寧に調査してくださったことが印象に残っています。これから新しいテーマに挑戦したいが、何から手をつけるべきか悩んでいる企業にとって、非常に心強いパートナーになるのではないでしょうか。